石巻から叱りに

今日、あつぎ市民ふれあいフォーラムが開かれました。南毛利地区地域福祉推進委員会の事例発表の後、基調講演が石巻市社会福祉協議会の阿部由紀(あべ・よしのり)さんによってなされました。演題は「震災から学び 今私たちにできること」。

「想定の範囲を広げること」。

想定の範囲を広げてください、とくり返し話されました。阿部さんは、南海トラフ、ですら死ぬかも知れないと想像するといいます(地域が離れていても)。厚木では多少影響があるかもなくらいしか危機感がないとしたら、それこそが問題だということをおっしゃりたいのでしょう。「旅先で、もし災害にあったらどうしますか?」

ボランティアの活かし方、地域との関係性のつくり方、など成功例を具体的に紹介されました。おそらくは失敗も多数あったことと思いますが、ポジティブに目的意識をもって取り組んだことにしっかり自負を持ち、将来は民生委員になると決意も持っている姿勢は素晴らしいものです。地域で親のことを気にかけない息子たちを呼んで先日叱りましたよ、と言われました。早くに父親を亡くされた中で若くして地域の活動の責任も負い、家庭を守り、という中で培われた責任感でしょうか、人物であると思います。

毛布が30枚しかない。濡れた人がいる、高齢者や障害者がいる、さてどうするか。阿部さんは、乳幼児を優先した、といいます。そして、その決断がトラウマでもあると言いました。究極の選択を迫られる時、その決断は想像を絶するものがあります。幸いにして、どなたも亡くなることはなかったと聞き、会場みなほっとしたと思います。

石巻津波予想が、国土交通省は10m、気象庁は4m。実際は21m!だったといいます。阿部さんは、小野寺(前防衛大臣)の野党時代に、その問題をおそらくは直訴されたんでしょう、でも与党になってからそのことを取り上げてもらってない、とちくりと述べていらっしゃいました。自身の集落では被害者が出なかったことは自慢されてましたが、常日頃から警戒する意識を持っていることの大切さを、実証的に示されたことになります。


もしかりに、今日同時に提案された「地域ふれあい宣言」が、市長や行政の思い先行で、進められるとしたら、阿部さんがわたしたち厚木市民に訴えたかったことを理解しきれなかった、ということになりはしないでしょうか。

市民が、それぞれが、家庭や地域を守るため、「他人事」ではなく意識化できるようになるために、阿部さんは私たちを「叱って」くれたのではないかと私には思えるのでした。