市長の多選自粛

昨日6月議会の最終日に討論をした原稿。実際はかなり登壇時に挿入して話を膨らませたのであくまで原案として記録。

陳情第16号、「厚木市長の在任の期数に関する条例」の実施を求める陳情について、委員長報告の通り、趣旨採択に賛成の立場で討論をいたします。

表題の厚木市長の在任の期数に関する条例の実施を求めることについては、条例遵守は当然のことなので、全く問題がありません。
議論の中であった陳情項目にある表現をめぐる指摘については、当該条例の規定と異なるため、採択が難しいという点であり、そのことをめぐりゆえに不採択とするべきか、否、その思うところは理解できるのであるから趣旨採択とすべきか、が分かれ目となりました。

不採択とするとすなわち、表題にある条例の実施を求めずともよいという議会の意思表示となる、その点を最も重く考え、趣旨採択は妥当だと考えます。

主張を裏付けるためいくつか補足をさせていただきますが、平成19年の首長の多選問題に関する調査研究会の見解によれば、立憲主義の基本原理、民主主義の基本原理との関係を考えたとき、それぞれの理念と多選の制限は合理的であるとの見解を示しています。憲法との関係においても1期限りとすることは憲法上問題があるという考え方を提示しました。

条例制定時の議論を見返してみましたが、当時も多選を制限すべきではないとの考えで条例には反対する意見もあり、結果議会採決では賛成多数として成立したものでした。憲法上の問題については、違憲との考えも一つの見識であろうとは思います。先に触れた当時の報告書では「本調査会は、実態面での検証は行っていない。また、地方公共団体の長の多選制限は、地方自治制度のみならず、政治面へも大きな影響を与える事柄と考える。今後、地方自治関係者や国会、政党をはじめ各方面において幅広い国民的議論が行われることを期待したい」とされていました。しかし、その後の議論はまだ不十分であるし、多選自粛ないし禁止の地方自治体の取り組みが昨今、幾分後退しているようにも見えます。多選を制限したいという厚木市のせっかくの挑戦について、その挑戦を放棄したかのように誤解を与えかねない判断はできません。

なお、あらためて過去を振り返ってみると市長ご自身、達成されたマニフェスト項目の中に「多選自粛条例の制定」を含めており、「多選禁止条例」を掲げ戦った選挙を経て成立した条例を同一の趣旨のものとして市民に周知をされたわけです。この両者の違いを問う必要性を議会は感じないまま今日に至っています。議会は言葉尻を捕らえることなく、その趣旨を受け止めてきました。よって委員会議論の中の「件名と項目の乖離」「条例の中身と多選禁止の実施は物が違う」との説をもって市民に納得いただくのは難しいと思われます。

議会基本条例 第7条「議員の活動原則」第2項、議員は、市民の多様な意思を的確に把握し、必要な政策立案及び政策提言を行うとともに、議員活動について市民に対して説明するものとする。の立場通り、項目に「禁止」の文言を使用したその背景を汲み、意志を的確に把握し判断することを、肝に銘じなければなりません。あえて厳密性に配慮した議論の経過を踏まえれば趣旨を酌もうとする趣旨採択は妥当な判断です。

くわえて、市長が強い思いをもって市長の多選を制限しようとしたその思いは変わっていないということが過日の名切議員の一般質問への答弁で明らかにされました。条例遵守は当然のことです。

ちなみに、条例遵守を明らかにしたうえでも法的には市長が四選を志向することを妨げるものではありませんし、条例を廃止もしくは一部改正をしたいと考えることも可能であり、それは別の議論になるわけです。よもや四選を志向することは考える余地もないとは思いますが、政敵へのけん制、市政の停滞を招かないためのモチベーションの維持、もろもろの政治判断からしばらく明言を避ける判断をされたと受け止め、市長の四選への道を開かんと議会が忖度したなどと言われることのないよう、趣旨採択を主張します。

なお、議論の中心となった陳情趣旨の表現ですが、11年前の小林市長の想いに最も近い表現ではなかろうか、という印象を持ってもおります。

また、かりに言葉の問題を主要な問題として不採択にすべきだとの結論を導いてしまった場合、ただちに議会は同条例の遵守を求める議会決議を上げるべきであろうということを主張し、同陳情を趣旨採択とすることについての賛成討論といたします。