生物多様性あつぎ戦略

niginigi32013-04-23

 つい先日、19日の全員協議会で報告がなされ63ページにわたる冊子版が配布された「生物多様性あつぎ戦略」、ですが今日行われたあつぎ環境市民の会で、担当職員による講演がありました。市民協働の貴重な成果として認められるものと思います。この戦略は、長期にわたり行政を、あるいは社会を良い意味で拘束する戦略となる必要があるものです。職員の、こうした出前型の講座はどんどん行って欲しいもので、プレゼンの力をつけることを期待します。

 職員では触れられない話でしょうが、問題は庁内で、たとえば都市計画などにこの戦略は上位で影響を与えることができるかどうか。総合計画にも影響を与えられるかどうか。自治基本条例が、なかなか効果を見いだせない(私から見ればの話ですが)ことを思うと、戦略を活かすためには行政に依存しない、自立した取り組みを強化することが求められると思うのです。

 よい勉強をさせていただきました。




■電王戦
 
 写真は4月5日付の朝刊の広告です。電王戦(第2回、主催はドワンゴ)、将棋の棋士とコンピューターの将棋ソフトとの対局、5番勝負を盛り上げようとの広告でした。結果、一昨日報道されたとおり、将棋ソフトの3勝1敗1持将棋(引き分け)ということで、新聞では衝撃走る、のように伝えられました。一般的には、どうして衝撃か、コンピューターにかなうものなのか、と思う人も多いかもしれません、が願望も入り混じって、でしょうか、やはり人間の頭脳に勝たせてあげたいと思うのが人情。しかも、実際、ソフトもこれまでは苦戦していたのも事実です。

 棋士の中でコンピューター事情に詳しい勝又清和六段によると、大局観や形勢判断の基準となる評価関数をプロ棋士の膨大な棋譜をもとにコンピューターに自動で学習させる「機械学習」によって、ソフトの形勢判断が正確になったこと、また複数のプロセッサに処理を分担させる「並列化」やPCをたくさん連結させる「クラスタ」などのアイデアで速く深く手を読めるようになった、ことをあげている。こうした状況から、事前予測として、事情に詳しい人たちではプロ棋士の2勝3敗、と苦戦を予測していました(「将棋世界」、より)。

 最近の将棋は以前とは比べ物にならないほど、実戦研究にもコンピューターは不可欠のものとなっているようです。膨大なデータ解析など、やはり無視できない「能力」は、貴重なのでしょう。ですが、どちらにせよ人間が織りなす文化芸術の分野に、機械が介入して凌駕するということはあり得ません。つまり、与える感動が違うものであるからです。私が言うまでもないことですが。

 さらに余談ですが、川端康成の昭和20年代の小説「名人」、は囲碁本因坊秀哉名人が木谷実七段と引退碁、というものを打ったのですが、その観戦記を書いたことをベースにして作られているもので、時代背景などを含めて面白いもの(木谷、といえば平塚出身、小説にも平塚が出てくる。木谷一門は有名)。

 この小説に、以下のくだりがありなお興味深い。この際思い出したので引用しておきますが


 この天才(註・私による:中国出身の棋士呉清源、当時六段)が中国に生れて、日本に生きているのは、なにか天恵の象徴のようである。呉六段の天才が生きたのは、日本に来たからであった。古い昔から一芸に秀でた隣国人が、日本で尊ばれた例は少なくなかった。今もそのみごとな例が呉六段である。中国にいては止まりになる天才を、育成し、愛護し、厚遇したのは日本であった。少年の天才をほんとうに発見したのも、中国に遊歴した日本の棋士だった。少年は中国にいた時から、日本の棋書に学んだ。日本よりも中国の碁の智慧が、この少年に一筋発光したと、私は感じることもあった。そのうしろに大きい光源が深い泥土に沈んでいる。呉は生れつきの才があった。としても、幼いころに磨き出す機会に恵まれぬと、その才が伸びないで埋もれてしまう。今の日本でも、芽立ちぞこなう棋才は少くないだろう。個人にもまた民族にも、人間能力のこういう運命は常にある。民族の過去に輝いて現在は薄れている智慧も、過去から現在まで隠れていて将来現れる智慧も、多いにちがいない。

 (以上、引用終わり)
 川端康成の見解をどう見るかはまた様々であろうと思いますので、これも深入りはしません。


 いまや、日本の囲碁の頂点を極めつつある井山裕太六冠ですら、中国や韓国に遠くはるか及ばず、という実態を知るにつけ、日本の今がいかに井の中の蛙であるかを思い知るのです。ある意味本題でもあるこの問題は、余談で語るには重いテーマなので別の機会に譲るとして、コンピューターとの対局も、商業ベースの議論はひとまず置いたとして、国内の内向きな議論の範囲にとどめずに、世界を視野に入れた文化芸術の在り方を思考するなかに謙虚に位置付けてもらいたいと、切に願う一ファンであります。