公立病院などの会計基準見直しについて

 先日の新聞報道を見たところ、水道事業や公立病院の会計基準を民間並みに改める方向を打ち出したといいます。借入資本金という名称で資本計上している長期借入金を「負債」に計上するなどの措置をとる、新基準によると債務超過の事業も出る見通しで料金引き上げや一般会計からの補てんを迫られる自治体も出てきそうだ、と記事は伝えていました。検討は総務省が中心となって進められるのでしょうが、地方自治体が責任を持つべき事業における会計システムの在り方を総合的に見直してもらいたいと思います。

 民間企業との比較をすることが会計基準の統一の目的にされることは一概に否定はしませんが、民間企業と自治体経営では役割が異なります。自治体は不採算事業を切り捨てることができないからです。このところ、財政至上主義というような考え方からか、採算面を重視するところから自治体サービスは受益者負担という形での住民負担増がどんどん増えてきました。一般会計からの補てんも問題視されることが多くなり、税収が厳しい中ではますますその傾向は強まることが懸念されます。

 基準、ということでは私は一つ、ずっと疑問に思っていることがあります。それは自治体の臨時職員の賃金は物件費扱いになっているということです。つまり人件費率には当然正規職員分しか反映されません。自治体サービスを提供するにあたって、多くの人手が必要で多くの臨時職員が働いているのにきちんと実態があらわされず、また人件費が高いことが問題だという民間並みの考えが背景にあるから実態を隠ぺいすることが黙認されてきているのではないかと思うのです。委託事業においては事業全体に支出されているために委託業者がどれだけ人件費に割いているかさえ自治体の予算決算には反映されません。自治体サービスの上では人手が必要とされる部分は大変多く、福祉や教育など採算が上がらない部分も多いのです。その必要性を正しく認識したうえで、財政がどのくらい本来は必要かをはじき出す必要があるはずです。

 ところで、08年度の上場企業の労働分配率は過去25年で最高水準の55.1%だと日本経済新聞が集計したということが9月ごろに明らかにされていました。労働分配率は付加価値全体、粗利に占める人件費の割合で、今回の場合は人件費が2.7%減少しているのに比して粗利全体が20.3%も減少したことによるといいます。分子も減少したが分母が大幅に減ったために数値が上がったということです。
 こうした数字が現れると、数字を維持、改善することが前提になると粗利が上がらないだろうと予測された場合企業は人件費を徹底的に押さえるはずです。雇用の悪化が問題となっていたとしても、数字が優先されてしまいかねません。
 国など、公が関与すべきはこうした時に雇用や生活が悪化することを防ぐセーフティネットです。数字を根拠に客観的な事実を掌握することは極めて大切ですが、数字を鵜呑みにして動くことは危険であって背景を含めた分析と政治的な理念を介在させることが必要だと思います。

 今年も残すところあとわずかとなりました。政権交代がついに実現し、新しい政権の運営の難しさを感じざるを得ません。もちろん、私は民主党ではないのですが、民主的な政治の保証や市民の生活を守る視点で政治に携わる者のひとりとして、もはや政権交代の価値を後退させることは絶対に出来るものではありません。税制改正大綱が出され新年度予算の方向性も見えてきました。長い官僚政治のもとで山ほどのつけが回されてきた今、その解決がいっぺんに求められてきているのです。ことは簡単ではないのは先刻承知、私は自治体の中で今までもそうして臨んできましたし、これからもその立場を貫いていきたいと思う年の瀬です。忙しい日々は相変わらずで、大掃除が正月にもつれ込みそうです。