保育所の施設基準緩和

 このところの待機児童対策というのはほぼなし崩し的に「押し込め」というもので、臨時の措置としてやむを得ないとはいえ十分な保育環境を保証するものではありませんでした。その意味で厚生労働省保育所の施設基準を緩和する旨を発表されたことは必要だと思いますが、一方で保育の最低基準は劣悪な保育環境を容認しない意味で一定の意味を成していることであって、国が一定の基準を持つことは私は必要だと思います。大都市部(がどこまで指すのかはありますが)についてはとくに逼迫した保育ニーズがありますので緩和は理解できますが、どの自治体においても細かな実情に応じて、柔軟に自治体が判断できるようにすべきです。
 人数がたくさんいるのに人気の集まる市街地周辺の保育所は保育室のスペースもぎりぎりだし遊びまわるには園庭が狭すぎます。独自にスペースを確保するには資金の問題もあるので近くの空き室や公園を改良するなどして対応することは考えられないでしょうか(近隣公園をそのままカウントするのはいささか乱暴)。昨今は送り迎えのスペースの不在なども問題となっていますので、この際はそのあたりが利用者本位に考え直されることを望みます。
 なお、待機児童が集中する理由はもちろんいろいろありますが、とくに3歳未満児に顕著です。それだけその年齢層の乳幼児をみるのにはたくさんの保育士が必要だからですが、面積要件などを緩和するだけではこの問題の解消にはなりません。1人の保育士で大勢の乳幼児をみるというのはさすがにどうかと思いますので、保育士を確保することも同時にやらなければなりません。これは自治体ごとの姿勢にもよります。国の基準のせいばかりとはいえないということも私は言う必要があると思います。
 

 そもそも、地方分権改革推進委員会の方向性というのは地方分権という意味においても強い自治体を作るという匂いがします。合併などを促進したり、弱い財政力の自治体のことは考慮されなかったり、というのではいかがなものでしょう。一部に過ぎませんがそういう指摘をする識者もいます(権限委譲や財源移譲は結構ですが、自治体行政がどういう理念のもとに行われるのかの中身こそ重要です)。ただ本質的に、国の基準があったとしても、許可や認可を国が行う必要はないわけで地方で十分でしょう。保育などは自治体のほうが責任を負うのにふさわしい分野であることは間違いありませんので、基準は残したとしても裁量を自治体に認めるべきだと思います。