芝生を野草に、ベンチを丸太に

niginigi32009-10-16

今日は「生物多様性」についての政策勉強会に参加してきました(大手町)。内容は

講義1「環境の時代、議員の役割」(日本生態系協会会長・池谷奉文氏)
講義2「人と自然の共生する国土空間へ‐エコロジカル・ネットワークの形成に向けて」(国土交通省国土計画局計画官・名執潔氏)
講義3「地方自治体における生物多様性に関する事例紹介」(日本生態系協会グランドデザイン総合研究所)

というものでしたが、ヨーロッパなどの先進例に学び日本の将来に向けて考えるべき内容の多いもので勉強になりました。

 第一に、すでにおそらく国土交通省の中では理屈の上ではダムは非効率だということがわかっていたのではないか、私はそう思ったのです。
 それは、配布された(財)日本生態系協会のパンフを見たら、以下のような記述があったからです。

 ダムや堤防、川の直線化などの人工構造物に頼った治水対策は、建設費にかかる費用だけでなく、維持管理、またはつくり替えなどの更新を行う際にも莫大な費用を必要とします。国土交通省では、公共事業費の縮小が見込まれるなか、これまで建設してきた大量の施設が老朽化する時代を迎えるにあたり、予算の観点から今後の見通しについて推計しました。その結果、2020年代の初めには維持管理・更新のための費用が公共事業費を上回り、新規の公共事業ができなくなるばかりか、これまでつくってきた施設をすべて維持管理していくことも不可能になるということがわかりました。こうした状況を踏まえると、人工構造物に頼りすぎた治水対策は、今後考え直していく必要があります。(太字は私)

 全体の記事は、今までの治水でも洪水の被害は減っているわけではない、という話や自然の治水機能が失われたことの問題について、協会の視点から触れられていたのですが、引用にあるように国土交通省自身が(おそらくは省内の一部かもしれませんが)政策転換の必要性を認めざるをえないことを自覚していたのかもしれません。
 だとしたならば、前原大臣だけが矢面に立つのはおかしな話ではあります。今日の勉強会は講義を聞くのみで質問を受けていませんでしたので、残念でしたが、国土計画局の計画官が不十分ながらも国土管理の課題について触れたことをみても、国土交通省自身からもこの間の治水政策の問題点を明らかにすべきと思います(補足は後述)。

 勉強になった第2の点。今日の講義で提案された方向性の中で、日本が、あるいは地方自治体が取り入れるべきだと思うものがいくつもありました。「なにか工事など人工的に手を入れるとしたら4割は工事、6割は保全、にすべき」「緑を植えればいいというものではない、その地域の植生にあったもので一種類にしたりはしない」「人工的に加工したものを見せて環境教育などとはいえない」「わざわざ芝生を植えないで野草でいい、ベンチの代わりに丸太を置いておけばいい」などは協会会長の講義から。参考にしたいものです。
 
 今日の新聞にも出ていましたが来年には名古屋市で第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)が開かれます。「緑の保全の拡充」などと言われていますが抽象的であり、しかも「持続可能な」云々のフレーズが今までの経済システムからどのように転換することを意味するのかが具体的に伝わらないということが問題です。

 無理にお金をかけて人工的な公園などを作ることに慣れてしまった日本、そして地方自治体。そうした公共事業が当たり前であることも含めて、転換してみればきっと「このほうがいいのではないか?」と気づくはずです。自然と調和することのほうが気持ちいいでしょう。わざわざ癒し効果を求めなくてもよくなるのですから。

 さて、国土交通省国土計画局の今日の資料から、ひとつだけ補足しておきます。
 昭和37年・1962年(私が1歳)にはじめて「全国総合開発計画」が打ち出されたが、このなかでは自然環境の保全などについて項目はなかった。
 次の「新全国総合開発計画」(昭和44年・1969年)では野性的未開発の性格をあるがままに温存する地帯、生産の場であるとともにレクレーションの場となる農地・林地等の地帯、市街地地区、の3区分に応じて自然の保護保全を図ることを計画の主要課題と記述、したという。
 以降、「三全総」(昭和52年・1977年)、「四全総」(昭和62年・1987年)と「環境保全」は謳われはしている。

 というようなこれまでの国土計画上の位置づけがあったというのは事実としても、それらは「○○との調和」「自然に配慮した開発」などと位置づけをあいまいにされてなし崩しにされていったのです。
 同じ失敗を繰り返さないために、国土交通省はしっかり総括を出していただきたいと思います。地方自治体と一体となって方向転換をするために、きっちりと。