概算要求90兆円超

 報じられているところによると、来年度予算の各省の概算要求総額が90兆円を超える見通しということです。経済状況が好転せず、特に雇用情勢が最悪の状況で、家計支出も伸びない状況で財政出動が前提となることによるものと思われます。このところの第二次補正予算を生み出すための財源ねん出に苦労した中でも、相当絞り出した厚生労働省も当然のことながら要求額は跳ね上がらざるをえません。もう少し、全体枠が見えるといいとも思いますが(ほかにはないのか?)。セーフティネット構築のために生活保護などの福祉、医師確保や医療費負担軽減、保険など社会保障費の負担軽減などの医療分野、雇用形態の確立のための法整備と緊急対策などを抱える厚生労働分野に振り向けるためには、厚生労働行政内の予算の配分見直しだけでは追い付きそうもないと思えるからです。
 役割が見えないなどと言われている国家戦略室の出番はこれからでしょう。やたらと「企画部」が焦って方向性を打ち出しても意味がないし、これから長期にわたる国家戦略をそうそう簡単に打ち出せるとは思えません。いまのところ、日米関係も堅持しつつ東アジアの中での日本のイニシアチブをどう作るかに舵を切れそうな感じはしますが、様々な角度から日本の転換の方向を戦略的に打ち出す必要があります。そうした点を考慮しながら各省の予算要求を精査していくことになるのでしょう。
 これまでの公共事業は転換をしなければならないですが、どのような公共事業にシフトを変えるのかも重要です。農業や介護、森林保護などの環境整備関連、内需関連に重点をあてる必要があります。企業はこれまで主に、当然と言えば当然ですが便利になるようにと開発がすすめられ、要するに人手が要らなくなるようにというものがほとんどでしたから、大量の雇用創出にはつながりにくいものですし、日本がこれまで伸びてきた分野は必要とされているのは海外市場ですし、しかも海外の企業にとって代わられる部分もあるものです。
 短期的な「景気刺激策」に終始していた自民党の経済政策が続いたことによって、こうした転換は相当遅れてしまったという感があります。その場しのぎではない転換ができるのは政権交代をした今からしかないはずです。小泉構造改革のような、国民には痛みを押し付けて格差拡大を容認するような転換は御免ですが、その逆に格差を縮小し、国民が公平になるための準備作業であれば先行きはそんなに暗くはならないはずです。