あくまで冷静に

 今日は初夏の厚さで、水辺で遊ぶ家族連れを見かけました。立春から88日、八十八夜です。もうまもなく立夏で暦の上では夏になります。

 さて、世の中は新型インフルエンザの騒ぎです。GWでの海外旅行をとりやめにした人も多いのではないでしょうか。知人のご家庭でも高校生のお子さんの海外研修は中止になったと聞きました。
 インフルエンザ対策で、水際作戦といってもよほど徹底しない限りは意味を成さないものでしょう。徹底できようもないことをわかっていて、完全な対応を求めることほど無意味なことはありません。過剰な反応によって際限ないほどの騒ぎにならないように「冷静に」対応すべきところです。

 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の前文に、こういう部分があります。
 「我が国においては、過去にハンセン病後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。
 このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。」
 過剰な反応、あおるような報道、これらは人権という観点からいってあきらかに疑問です。

 さらに、条文の中には、感染を防止するための協力という(44条)項があって、「都道府県知事は、新型インフルエンザ等感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者に対し、当該感染症の潜伏期間を考慮して定めた期間内において、当該者の体温その他の健康状態について報告を求めることができる。
2  都道府県知事は、新型インフルエンザ等感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定により報告を求めた者に対し、同項の規定により定めた期間内において、当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の当該感染症の感染の防止に必要な協力を求めることができる。
3  前二項の規定により報告又は協力を求められた者は、これに応ずるよう努めなければならない。」
 などとなっています。
 これらの条文の表現のとおり、「報告を求めることができる」「必要な協力を求めることができる」「応じるよう努めなければならない」というかたちで書かれていて、しかもそれらは「省令」に根拠を置くもので、あくまで義務とは言えないものなのです。
 今後しばらくはこの問題が一番大きな問題となりそうですが、厚生労働省がまずは落ち着いて対応しなければならないということを自覚してもらわないといけません。

 ところで、私の好きな小説・三国志には曹操呂布の戦争中にイナゴの大発生があって休戦を余儀なくされた、というくだりがあります。天変地異が戦争を食い止めた、そんな印象を与える一幕であるのですが、さて、日本の政局はどうなることでしょう。小さな新聞記事でしたがこうした情勢の中で民主党党首討論を申し入れたとか、小泉元首相が「追い込まれ解散になる」と語ったとか、出ていました。いずれにしても、こうした緊急の事態が訪れた時こそ、その国の真価が問われるものです。「危機管理」だとか「安心安全」などと言いつつも、その語り手が胎が座った人たちであるかどうか、そういう真価こそが問われるものでしょう。


■今日の朝日新聞に、伊勢崎賢治さん(東京外語大教授)のソマリア海賊問題についてのオピニオンが載っていました。やはり、伊勢崎さんも「ケープタウンをまわるほうが」いいと述べておられました。昨年8月の私のブログで紹介させていただきましたが、伊勢崎さんの主張は共感できるところが大きいです。とくに、憲法の前文の精神を最も正しく理解しているのではないかと、そう感じます。 
 明日は憲法記念日憲法のありがたみとは何でしょう、憲法の精神の何を私たちは受け継いでいくべきなのでしょう、そのために何をする必要があるのでしょう。