ソマリア海賊

 先日、臓器移植法について、早急な結論を出すべきではないとブログに書きましたが、もうひとつ、海賊対処法なる法案も成立を急ぐべきではないと言わざるをえません。恒久法にする意味や国会承認問題もありますが、この問題の議論が、自国の利害からだけ考えた議論に終始しているというのはどういうわけなのか、私にははなはだ納得がいかないのです。
 いたずらに海路を利用することじたいに制限を加えるという話を聞いたこともない。エネルギー輸送がタンカー利用だからにしても、それによって、日本経済は打撃を受けることになりますが、国際的な騒乱を挑発的に拡大するよりはましという考えは成り立たないのでしょうか。人質になるかもしれない地域にわざわざ近づくというのはどういうことでしょう。アフリカの諸国の力を借りることも真剣に考えているように思えません。この問題に詳しい獨協大学の竹田いさみ教授が書いたものには「喜望峰を回ることも」選択肢だというようなこともありました。
 
 これまで、アフリカ諸国を資源をいただくだけの対象としか考えず、民主化にも経済発展にも興味がない先進国がしっぺ返しを受けて騒いでいるという構図になっているだけではないか、貧困を作った責任は先進諸国に皆無といえるのか、無法国家を世界に生み出してきた現実を、自国の2000隻を守る議論に矮小化してしまってはいけないはずです。

 短期的な対応について言えば、強制力を持ってしか、直接的に効果がある対策はありえないし、その意味では日本に「何かできる」と考えるほうが安易かつ無責任で、足手まといにならないように役割を認識したほうがよさそうではありませんか。短期的な対応を決めるにあたっても、その前提は、新しい国際的な平和への構想であり、国家間対立をどのようなプロセスで解消していくのか、対立のはざまで生まれてきた問題をしっかりと認識したうえで今後の方向を指し示すことでありましょう。
 日本はソマリアとは外交関係が存在しません。危険なところには近寄らなかったではないか、だから国会の論議も浅くなるのです。(アメリカの軍事力を頼って、虎の威を借りてようやくおすそ分けをいただいていたというようなものではないのか、そんな国が、危なっかしいことに手を出すことは本当にやめておいたほうがいい。)
 直接、政府高官たちがソマリアを訪れて、平和的解決手段がありえないのか、考えてきてほしい。その護衛については武器の携帯と自衛のための武器使用はやむをえないと認めてもよいのではないか。その際は当然極めて限定的なので、恒久法にする必要は全くありません。それにしても及び腰の国会論議に日本の未来はないと感じてしまいます。