内部留保

 本日付日本経済新聞11面、「内部留保活用で雇用守れる?」としたQ&A形式の記事がありました。この記事の主眼は、「利益から株主への配当金を支払って残ったのが内部留保」で「企業は内部留保した資金を再投資し、成長するために使う」として、「内部留保金イコール手元資金ではない」から「手元資金を使って雇用を維持すれば、業績が一段と悪化して財政基盤を弱めかねない」といい、内部留保を活用して雇用を守れ、という論調に反論することにあるようです。
 この記事では、上場企業全体で08年度9月末時点の利益剰余金(内部留保にほぼ相当)は141兆円あるが手元資金は47兆円しかない、としていて、手元に資金がないから雇用を守ることにつぎ込みづらいと、大企業の弁護を行っているとしか思えません。
 しかし、141兆円もの利益剰余金を生み出すことができたのは、明らかに派遣労働者など非正規雇用労働者の力もあったことは否めない事実でしょう。企業が再投資を行うことを優先するのか、それともそれだけの企業に成長させることができた功労者たる働く人々を大事にするのか、という基本の問題なのです。
 したがって、この「反論」が説得力を持つとは思えませんが、バランスシートを見て経営診断をしただけでは企業の生き残りの論理が優先する可能性もあることを教えているものではあります。
 日本の国家存亡の危機なのです。企業が生き残れさえすれば国民が疲弊しても構わないと言うのならそれはもう企業のイロハを忘却した暴論としかいえません。税金を正しく使わずに来た官僚支配の政治の解体は急務ですが、だからこそ企業は国民を守る姿を見せるべきだとはいえないのでしょうか。