兵庫県立柏原(かいばら)病院の小児科を守る会

 以前、地域医療政策セミナーに参加した際に、城西大学経営学部マネジメント総合学科准教授・伊関友伸氏による自治体病院経営についての講演を聴き、その中で紹介されたのが表題の「小児科を守る会」の活動でした。

 柏原病院の小児科を守る会では、病院勤務の医師の過酷な勤務状態に対して、市民の側から支えていこうと署名運動を進めてきました。「こどもを守ろう。お医者さんを守ろう」と工夫を凝らした運動はとても素敵で、ぜひ同じような取り組みが各地に広がってほしいと痛切に思います。こうした活動は、医師と患者の信頼関係をつくり出していくために欠かせないと私は深く共鳴しています。とかく、患者はどうしても自分優先になってしまうもの。しかし、人の命を預かる医師を支えることも患者の役割だと思うのです。
 病気や怪我を治すということは、患者と医師の共同作業だと私は思っていて、医師に丸投げするのも私は良くないと思います。私は、小腸を20センチ切除する手術を2年前に受けましたが、手術の成功については執刀医の先生はもちろん、周囲の医師の方々、研修医の皆さん、看護にあたって下さった方々、多くの皆さんに心から感謝しています。費用は保険や税負担で支えられてもいますから、間接的とはいえ実に多くの人の力を借りて、今の私の回復は実現したのです。入院中は私も納得いくまで説明を求めたりしましたが、信頼を損ねたことはなかったと確信しています。
 医師と患者の、信頼に基づくコミュニケーションをつくりあげていかなければ、いくら医師を増やしても現場で疲弊してしまい、現場を離れていくことになりかねません。事実、私の知人の外科医も、つい最近現場を離れる決心をしてしまいました。友人の精神科医疲労困憊の状況です。
 医療事務の軽減など、行政でできるサポートも重要です。医療崩壊を防ぐためにできることにこそ、緊急に予算をつけてほしいと願います。
 そういう状況にあるにもかかわらず、先日現職閣僚から、許せない発言がありました。発言は撤回されたようですが、どうも認識が改まったというわけではなさそうです。国会で是非追及してもらいたいものです。国会議員有志150人で作られている「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」もこうした発言が生まれてくる背景をかんがみて、活動を続けてほしいものです。

 なお、許せない発言とは、舛添厚生労働大臣と二階大臣が妊婦搬送問題について会談した際に出たものです。舛添大臣が、病院同士の主張が食い違ったことについて「コミュニケーションがうまくいかない現状を、IT技術を駆使して解決できないか。両省で協力しながら国民のためになるシステムが作れないか」と述べたのに対し、二階大臣は「政治の立場で申し上げるならば、医師のモラルの問題だと思う。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」と発言したこと。この発言に対して医師会など各方面から抗議が殺到し、国会でも取り上げられて前述のとおり、発言撤回となったというものです。