天引き

 私の知人はいまだに月末に給料袋で「現金手渡し」の給料をもらっている。ときどき忘れられてしまうことには閉口しているようでしたが、知人は手渡しの原則を守っていることを評価していました。私も同感です。源泉徴収されているか否かは別にして、渡された給料から自分で必要経費を除くことは大事な作業だと言えると思います。

 天引きの問題は、税金や保険料の徴収が安易に行われることで徴税側は納税の際の苦痛を感じることができないことであり、納税者側には天引きに慣らされると納税に関する関心が薄れてしまうことであるといえます。さらに、たとえば少ない年金から天引きされてしまうと、まずはやりくりする「納税者の裁量」が奪われます。生活が優先されることは認められているので、減免の制度などがあるのであって、生活よりも納税が優先されることは問題なのです。役所の窓口がそうした減免などの相談を嫌がっていたら、市民は行き場を失っていき、派生的な問題の根源ともなるわけです。
 また、昨今の税のフラット化も、徴税する側の事務軽減にはなるでしょうが、そんなことは優先されるべきことではありません。徴税、納税のあり方は行革の入り口のはず、政府は方針転換をすべきです。

 市場の動きは友人と「一時持ち直すだろう、でも長くは持たないだろう」と話をしていたとおりになっていますが、公的資金というのは血税であって、莫大な血税をつぎ込んで持たせようとする金融システムは将来の安定を保証しうるものであるはずがありません。たしかに、金融機関が中小企業などへの資金貸し出しなどを凍結するなどは大変な事態になるので避けなければならないことですが、本質的に資本増強を公的資金で行うことで解決されるものではないのです。
 国民(の税金)は金融を救っても、金融は国民を救うのであろうか?
 救うというのなら、国民経済を、長期にわたって回復させることが一番大事でしょう。

 政局より景気、と首相は言いますが、国会冒頭に政局に誘導しようとしたのはほかならぬ首相自身でした。所信表明時、すでに経済は深刻な状況に会ったのは明白で、その状態でもまったく危機感を持たないまま野党攻撃の挑発的演説を行っていました。また、日本経済は全治3年と首相は言いましたが、おそらくなんら根拠のない数字でしょう。日本経済が相対的に優位だとして安心していた担当大臣ともども、日本を再生させる処方箋を示すことは不可能です。そもそも今日の事態は、「いざなぎ越え」と言われた「景気拡大」の中で進行していた事態であって、「格差問題」を軽視してきた連中に何がわかり、何が変えられるというのでしょう。