半沢直樹

 久々に夜のドラマが話題になっているようです。原作は池井戸潤氏による小説、堺雅人さんが主演の連続ドラマでたしかに痛快。ちょっと言えないなーと思うようなセリフを上司に向かって吐いているというあたりがシンパシィを得ているのではないかと思います。おそらく、ではあなたも同じようにやってみたら?と言われれば誰もできないであろうけれど、だからこそ非現実性のドラマの娯楽が生きるのでしょう。最近のドラマではたとえば残虐なものなのを扱えば、実際のほうが残虐だったりしてドラマの意外性を楽しむことができない場合もあり、シリアスなテーマのものも同様で、現実と同化してしまって娯楽にならないケースがあります。それでは、視聴者を引き付けられません。そういう意味では、まあ楽しめるドラマなのかもしれません(今のところは)。

 職場で、感じることがあるであろう理不尽な日常は、いまどのように解消されようとしているのか、私は気がかりです。主要な大企業の内部留保について、「2013年3月末(一部5月末)までの1年間で約6兆円(8.2%)増え、 総額77兆6435億円に上った」と共同通信の調べで分かったことが報じられました。この内部留保を巡っては首相らが賃金上昇に充てるべきとの考えを示しましたが、日経連は「労使が決めること」との原則論を持ち出して拒絶しています。しかし、いま、健全な当たり前の労使関係というのは存在しているのでしょうか?

 労使が決めること、と労働者側が主張するならばわかりますが、経営者側がそれを盾にするというのはどういうわけか、そしてそのことにたいして猛然と抗議しない現状をどう見るのか。本来はそこにこそ、おかしいのではないかと訴える必要があって、できないうっぷんをドラマで解消するのはもったいない話のようにも思えます。


 今の日本では、あらゆる既存の概念に変わりうる新たなもの、が提示されていないことによる閉塞感が蔓延しているようです。