今年も参加、地域医療政策セミナー

niginigi32012-10-25

 全国自治体病院経営都市議会協議会主催の第8回地域医療政策セミナー(都市センターホテル「コスモスホール」)に、今年も参加してきました。例年、仕事が重ならないで体調不良でもない限りは参加してきていますが、毎回400人近くの地方議員らが聴取するセミナーで、内容もなかなかのものが続いています。
 講演の1つ目は「岐阜地域における当院の役割と今後の方向性〜メガトラス工法と地域連携パスを中心に〜」と題し、岐阜市民病院の病院長、冨田栄一氏が講演されました。病院の建て替えの条件は類似しており、理念は共通と思われました。また、地域連携パスが成立する条件は、病院が主導するのではなく、医師会が主導することが大切だとの経験談は記憶しておきたいもの。600床になる規模の岐阜市民病院がある地域の実情をそのまま当てはめることは当然できないまでも、大学病院、日赤病院などの橋渡しと地域の診療所との紹介、逆紹介、その成功例は謙虚に学びたいところです。

 いずれにしても、地域実情によって、病院の具体的な役割も異なろうというものです。したがって、こうしたセミナーも、たんに、成功例をまねしようという気持ちで受け身になって聞いてもあまり意味がないように思えます。質問でも、全部適用がいいか、独立行政法人がいいか、を主目的にしたものが必ず出ますが、その答えを聞いてもそのままだからと言って、ご当地で最適かどうかは鵜呑みにすべきではないというのが私の考えです。

 講演の2つ目は、「住民と話し合う医療」。一関市国保藤沢病院(岩手県)の佐藤元美氏から。

 小さな町の病院の話。セミナーでは、最近、人と身近に接する、という視点のこうした小さな自治体の病院の話を取り上げます。これこそ、参加自治体の状況によりますが、都市部の病院ではまねをしようと言っても意味がなく、ただし、思いの中から掴み取れるメッセージはいっぱいあります。むしろ、医療について、立ち止まって考えてみようという姿勢は政治に携わる者にとっては(医療従事者以上に)重要かもしれません。人口1万人に満たなかった藤沢町が合併して一関市になり人口は12万人に。それでも、人と人との結びつきの非常に濃い、ヒューマニズムを感じさせるドラマがある、そうした地域に根差せばおのずと地域包括医療にいきつくのではないでしょうか。

 住民との話し合い、によって苦情がなくなる、という話は以前も確かどこかの病院の実例で聞いた記憶もあります。ここもそのようで、「地域ナイトスクール」、という実践例は説得力がありました。無診療投薬の要求は激減し、待ち時間のクレームも減った、と佐藤さん。住民からは数万円から1000万円にもなる寄付も増えたと。これは、小さな地域から医療機関がなくなってしまったら大変だという地域の住民の、意識の変化による、と言われました。当然、未収金も減少。

 概要はこの程度です。石原都知事の突然の(想定の範囲ですが)行動もあった今日ですが、いまさらそのことは政界に激震、というほどのこともありますまい。以下に、この2つ目の講演のメモをある程度記しておきます。

 佐藤元美氏プロフィール。昭和30年岩手県南の無医地区に農家の長男として生まれる。「大学に行って数学をやりたかったが受かったのが自治医大だけだった」昭和54年自治医科大学卒業、県立病院勤務。平成4年から藤沢町に移る。「町長に来るように言われたが病院の建物を作る計画だけあって、まだ国も県も大反対しているような状況だった」平成5年藤沢町民病院を創設し病院長に。平成17年、病院事業管理者に就任。60床以下の小さな病院。

 病院の側から見た変遷は、昭和43年県立藤沢病院が廃院。昭和57年、特別養護老人ホーム国保診療所で藤沢町福祉医療センター設立。平成5年、国保藤沢町民病院創設。平成8年、老健と在宅介護支援センター。平成11年、訪問看護ステーション。平成15年、痴呆性老人グループホーム平成23年、一関市国保藤沢病院に名称変更。となっています。

 藤沢町、で唯一の医療機関、民間なし、連携先もなし。内科常勤4名。外科常勤1名。整形外科常勤1名。放射線科常勤1名。非常勤が整形外科、内科、精神科に数名だといいます。一般病床54床、利用率は90%以上、在院日数は平均18日と長い。

 合併して一関市になっても人口12万都市で呼吸器、耳鼻科、眼科、の常勤医がいないといいます。

 経営は、平成6年以外は単年度黒字を継続、一時は一般会計に1億6千万円を貸し付けたこともあると。

 38歳で病院長を受けた佐藤さん。「だめになる病院はどんなものか。政治と病院が対立するケース。(技術の)レベルが低い病院」と。様々な遠慮や不満が、議員や職員によって増幅する経験をしてきた、とも。3年程度で交代される、首長のほうを向いて仕事をする公務員は事務方においておけないと、事務職員の採用権限も院長に持たせるように改革をしたといいます。このあたり、徹底しています。考えさせられます。

 住民と医師の信頼関係の構築のために、直接話し合うことの大切さを説きます。「患者としてではなく、医療を支える住民」「医療の知識ではなく、医療の在り方」「密室ではなく、開かれた場所」「選ばれた代表ではなく、誰もが参加」「医師は住民の期待や評価を受け止め」がポイント。

 ナイトスクールは、農閑期に年1回。町内10か所から3か所の集会所で。夜7時から9時。平成6年度から開始。参加者は30名から多い時で100名。

 以上、配布資料を参考に、抽出しながら講演時のお話の中から印象に残ったことを加えてメモにしました。