インフル発熱チェック、そこまでするのか?

 毎日、体温を調べて子どもを送り出す家庭、児童生徒の体温の記録をチェックする学校(学級担任)、このプロセスを決定したのが「厚木市新型インフルエンザ対策本部」。決定後、教育長名で各学校長に「通知」を出しました。この決定(通知)には、学校現場で議論する余地を一切認めておらず、なぜそうしなければならないのかについて、あるいは必要だとしても、誰が管理するのかについての(たとえば保健や養護の教諭を含む)議論を保証するようには読み取れません。「指示」では、教育委員会が管理者を「担任」と指定したわけですから異論をさしはさむ余地がないわけです。
 当然子どもにかかわることですから、家庭からも学校からも疑問の声が聞こえることはないかもしれません。そうして、当たり前のように毎朝の健康チェックと称した過剰な対応が進められています。断わっておきますが、こうした事務は、厚生労働省からの指示があるわけでもなくあくまで自治体の自主的判断に基づくもので、法的根拠もないものです。だから、


 やらなくたって構わない。

 
 どこの学校からも「なぜ、どういう経過で、決定したのか。もし、発熱した児童・生徒がいた場合はどうするのか。学校で朝は元気で途中で発熱した場合はどうするのか。37度3分の発熱はどう判断しますか?」など、問い合わせがないというのもどういうわけでしょう。教育長の「通知」がそんなに、権威があるのでしょうか? 黄門さまの印籠? 紙切れ一枚にそんな権威を持たせてどうするんでしょう? 埼玉や横浜でやっている、とか、そうすることで各家庭で子供の健康管理に関心を持ってもらいたい、とか言っているようですが、言っておきますが、体温計でチェックすれば関心を持っていることになるなどとは到底思えません。さらに、今の親は子どもの健康に無関心であるかのような決めつけは傲慢ではないでしょうか。私立幼稚園には協力要請しかできなかったといいますから、要するに公立学校だから上から統制できるという話に過ぎず、学校の管理主義、の最たるものでしょう。
 しかし。時代の推移というものか、こうしたことに疑問を感じなくなるんでしょうか。 

 担当課は、保健給食課(らしい)。課長から説明を受けたものの、この担当課でも「対策本部が決定したことだから自分たちで検証することもないだろう」くらいなもんなのか、こだわりを持っていてくれているのやら。最初はこの担当課が問題だろうと思っていましたが(いや、問題がないわけではありませんが)、決定過程にかかわった関係部長たちに疑問をぶつけなければなりません。さらに言えば対策本部の長は市長ですから市長に問うことも必要になるかもしれません。

 熱がないのが明らかなのに、毎日体温表を提出する行為に人間は慣れてはいけない。学校の管理上、プールに入る時くらいはその必要性を認めよう。ですが、「濃厚接触」(この言葉も相当違和感がありますが)の有無も問わないで、一律全員に体温測定の義務を課したことに、私はだれが何と言おうと絶対に違和感があります。また、このチェックは5月31日までという期限を設けてあるようですが、この根拠は何でしょうか??

 現代は、管理することや管理されることが本当に好きになってきたもんだ…。

  • 追記 副市長に面談

 この件で、市民健康部長に説明を受け、そもそもの決定は5月2日の市長・副市長・教育長の3役会議で行われたと聞いたので、副市長に説明を受けました。5分のつもりでしたが、30分も経過してしまいました。副市長の説明のポイントは「あのときは緊急事態だった。忙しい親もいるから子供のことを見ていないケースがあるかもしれない」。学校で対応をどうするかの時間を経るべきだったと指摘しても、「パンデミックとか言われている時期だったので」と、いう話。要するに、私に言わせますと、行政があわてているんですねえ。もっと冷静になってください。フェーズ5パニック、とでもいうかんじでしょうか。
 国の対応も疑問が多いのですが、国だってそんなに「あわてろ」とは言ってないんですから。参考までに、「新型インフルエンザに関する対応について」という都道府県教育委員会などに向けて出された文部科学省の事務連絡(あくまで事務連絡、5月1日付)を以下に抽出して掲載します。こういう記述がありました。
 
 『また、本日、新型インフルエンザの疑いがある患者の届出があったことを踏まえ、国内での発生に備え、児童生徒等に新型インフルエンザの疑いがある場合は、医療機関に直接行くのではなく、まずは最寄りの保健所等に電話等で御相談し、必要に応じて感染症指定医療機関等に受診することについて周知をお願いします。また、児童生徒等に対し、感染の予防に極めて重要なマスクや手洗い、うがい、人混みを避けるといった日ごろからの基本的な備えをすることについて周知をお願いするとともに、引き続き、正確な情報に基づき冷静な対応をお願いします。』

 これを見る限り、毎日毎日体温を測れというのは理由がよくわかりません。よびかけるのはいいでしょうし、無理をしないで少しでも発熱があった場合は問い合わせをしろという情報提供も必要でしょう。しかし、義務化して学校の場で管理責任を負わせるとなると、事情が異なるはずです。

 しかしながら、この状況をみると、もしかりに厚木市で一人でも感染者が出たら恐ろしく騒ぎたてられるのでしょう。パニックを起こさないようにするのではなくパニックを誘発することになりかねません。