WTO決裂

 WTO決裂、それはそうだろうなあ。
 福田首相は「極めて残念だ」と言い、町村官房長官はインドと中国の対応について、「自国の利益を重視するあまりに、世界経済全体をどこまで考えてくれたのか」と疑問を呈した、と報道されました。別に、自国重視はインドや中国に限った話ではあるまいに。世界経済全体を今までアメリカはそんなに考えてくれていたとでも? 日本の役割は常に、将来あるべき姿を考えて世界をリードすることであるでしょう。
 日本が高度経済成長を実現するころ、中国との国交正常化がありました。そのとき、中国は賠償金を請求しなかったことはよく知られていると思います。戦後補償問題はその後個別問題も含めて両国間の信義の問題として継続していますが、あの時代に経済的負担を国家的に強いられなかったこと、そして国交正常化による中国との経済交流の実現したこと、をマイナスだったなどという意見は今日ありえないでしょう。
 むろん、その後の中国の政治的民主主義の発展についてはまた違った議論になりはしますが、新興国の市場拡大にある程度国際経済が依存しているという一面も否定できない以上、ドーハラウンドの責任は短期戦略ではありえず、長期戦略であったといえましょう。ゆえに、決裂は必然で、何の不思議もないというのが私の意見です。
 もちろん、これで当面日本農業へのしわ寄せは避けられたので喜ぶべきです。しかし、それは危機の繰り延べという側面もありますので、国内的にも国際的にも農業をどう維持発展させるのかをはっきりさせなければなりません。
 理想を言えば、関税もかけず、保護する必要もなく、国際的に協調して食糧を分配することができれば。そうではないでしょうか? 必要なところに、見返りを計算することなく、不公平がないように分配することこそ、人類の叡智なんではないのでしょうか。

  • 原油相場が調整局面に入ったというニュース

 主に米国での商品先物市場への監視強化や、株式市場の空売り規制の動き、さらに、米国の住宅公社2社への支援法案が成立したことによって、投資資金の流れに変化が生まれているといいます。さらに、米議会では1つの商品への一投資家の持ち高を厳しく制限する内容といわれる先物投資規制法案も提出されているらしい。アメリカでは先週、ガソリン在庫が急増したと発表されていますが、投機マネーを野放しにしたら次はまた同じようなことになるのです。それによって全世界の人々が苦しむのだということを、国際社会は知った上で対応策を急いでいただきたいと思います。