安倍新首相の

 所信表明演説の中で、いろいろと気づいたことがありますが、農業政策のところで以下のように述べたことには農業と食料の現状について、認識が余りに薄いように思えてならなかったので、少しだけですが触れておきたい。

 『地方を支える農林水産業は、新世紀にふさわしい戦略産業としての可能性を秘めています。日本の農林水産物や食品は国内向けとの固定観念を打破するため、「おいしく、安全な日本産品」の輸出を、2013年までに1兆円規模とすることを目指します。「人生二毛作」の実現に向け、就業を促進する仕組みをつくります。』

 というのがその部分です。人生二毛作、とは何のことだか私にはわかりかねますが、初の戦後生まれの首相の認識の甘さが指摘されることでしょう。この演説内容は、小泉前首相の踏襲といえばそうでもあるのですが、農業の「自由化」を意味していて、郵政以上の構造改革を求めているのです。農業生産に携わっている人々のみではなくて、日本人全体に関係する重要な問題となります。

 国際競争力をつける産業として育成する、といえば聞こえは悪くないし、原則的に間違いとはあながち言いがたい。でも、であればなおのこと、米国産牛肉の輸入再開などに見られるような、食の安全性の確保は絶対的な至上命題であろうと思われます。そうしたことに無頓着で無反省のままで、競争力のみを優先させる考えこそが、問題だと私は考えます。